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展覧会「大正イマジュリィの世界」

展覧会「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s—1930s」が、東京・新宿のSOMPO美術館にて、2025年7月12日(土)から8月31日(日)まで開催される。

大衆の内面を反映した“大正時代の印刷物”

小林かいち 絵葉書セット「灰色のカーテン」より 大正14-15年(1925-26年)頃 さくら井屋(京都) 個人蔵

大正時代は、明治時代の立身出世主義と昭和時代中期の戦時統制のあいだにあって、個人の内面に目が向けられた時代であった。こうした大衆の感性や感情が表現されたのが、当時最先端のメディア・印刷物である。印刷技術が発展したこの時代、日本の伝統と西洋の芸術、アール・ヌーヴォーやアール・デコの様式が融合し、独特の感覚を持つデザインやイラストレーションが育まれたのだった。

水島爾保布(挿画) 谷崎潤一郎(著) 『人魚の嘆き・魔術師』 大正8年(1919年) 春陽堂 個人蔵

展覧会「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s—1930s」では、大正時代の大衆が抱いた感覚や感情、欲望を反映した印刷物、「大正イマジュリィ」を紹介。近代の書物と刷物を愛した山田俊幸の収集品より、竹久夢二や高畠華宵、杉浦非水、橋口五葉など、大正時代を中心に約330点の印刷物を一挙公開する。

竹久夢二ら12人によるデザインやイラストレーション

畠華宵(口絵) 《初夏の風》 『少女画報』18巻5号 昭和4年(1929年) 東京社 個人蔵

本展では、「大正イマジュリィの作家たち」と「さまざまな意匠(イマジュリィ)」という2つの視点から、印刷物の数々を紹介。「大正イマジュリィの作家たち」では、大正時代の出版文化に大きな足跡を残した12人の作家を取り上げ、その作品を展示する。

竹久夢二(表紙絵) 『汝が碧き眼を開け』(セノオ楽譜第56番) 大正6年(1917年)初版/昭和2年(1927年)7版 個人蔵

たとえば、儚げな「夢二式」美人で知られる竹久夢二は、雑誌に労働者や女性、子どもなどの庶民を抒情豊かに描くとともに、文筆や作詞、小さな日用品のデザインまで幅広く手がけた。また、高畠華宵は、本画の素養と西洋文化の知識を活かし、モダンな美少女像を提案している。そのほか、日本初のグラフィックデザイナーである杉浦非水、夏目漱石や泉鏡花らの著作で装幀を手がけた橋口五葉、オーブリー・ビアズリーの作風を彷彿とさせる謎多きデザイナー・小林かいちなどの作品を目にすることができる。

「生」に「グロテスク」、さまざまなデザイン

中恭吉(木版画) 《冬蟲夏草》 大正3年(1914年) 個人蔵

一方、「さまざまな意匠(イマジュリィ)」では、当時の出版物に見られるデザインを、テーマごとに紹介。そのひとつが、「生の飛躍」や「生の躍動」などと訳される「エラン・ヴィタル(élan vital)」だ。フランスの哲学者アンリ・ベルクソンにより唱えられた「エラン・ヴィタル」の思想は、生命には創造的に進化する衝動が備わるというものであり、大正時代にはこの影響のもと、創造性が重んじられた。会場では、田中恭吉の木版画《冬蟲夏草》など、大正イマジュリィに底流する「生」の表現に光をあてる。

装幀者不詳 フィリップ・ダニング、ジョージ・アボット(著) 『世界大都会尖端ジャズ文学 JAZZ ブロドウェー』 昭和5年(1930年) 春陽堂 個人蔵

さらに、水島爾保布が挿画を手がけた、谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』などに見る「怪奇美(グロテスク)」、関東大震災から復興した東京の「尖端都市」、古都としての顔とモダン都市としての顔を持ちあわせた「京都アール・デコ」などを取り上げ、人々の意識に変化をもたらしたさまざまな印刷物のデザインを紹介する。

展覧会概要

展覧会「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s—1930s」
会期:2025年7月12日(土)~8月31日(日)
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)
観覧料:一般(26歳以上) 1,500円(1,400円)、25歳以下 1,100円(1,000円)、高校生以下 無料
※( )内は事前購入券
※事前購入券は5月13日(火)10:00より、公式電子チケット「アソビュー!」、イープラス、ローソンチケット(Lコード 32995)、チケットぴあ(Pコード 687-208)などで販売
※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳の提示者本人および介助者1名は無料、被爆者健康手帳の提示者本人は無料