子ども鑑賞会
日程:7月13日(日)
会場:TOHOシネマズ シャンテ
登壇:鈴木唯、早川千絵監督
この度、第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、世界の脚光を浴びた『ルノワール』が、6月20日(金)から新宿ピカデリーほか全国にて公開中。
子どもゆえの好奇心をまるごと描いた本作を、主人公・フキと同年代の子どもたちに見せる機会をつくり、自由に意見を言える場で、感受性の芽を育てたい――また、かつて少年・少女で、今フキと同じ年頃の子どもをもつ親御さんに、子どもの好奇心と向き合って頂けたら、という考えのもと、TOHOシネマズ シャンテにて小中学生と親御さんを招待し、本編上映後に、早川千絵監督・主演をつとめた鈴木唯さんと、映画を鑑賞した子どもたちが語り合うティーチイン上映会を開催いたしました。
第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されて好評を呼んだ『ルノワール』が現在絶賛公開中。7月13日には都内映画館で“子どもたちと語る”ティーチイン上映会が実施され、主演の鈴木唯と監督・脚本の早川千絵が登壇した。
小・中学生を中心とした15人の子どもたちのほか、その保護者や一般客が本編を鑑賞。上映前に早川監督がステージに登壇し、「この映画は11歳のフキという少し変わった女の子が主人公です。そして映画自体も皆さんがいつも観ているような映画とは少し違う、変わった映画です。最初は少し戸惑う人もいるかもしれません。どうしてそのように作ったのかというと、観る人に沢山想像しながら観て欲しいから、観る人の想像力や感受性によって形を変える、そんな映画になって欲しいからです。映画とは誤解する自由があると思います。感じ方に正しい答えはなくて、作った私も驚くような見方や受け取り方があればあるほど嬉しいです」と呼び掛けた。
そして上映後には、子どもたちとの活発なティーチインを実施。主人公・フキを演じた鈴木は「映画を観たばかりでわからない事もあると思うけれど、ゆっくりお話しをしてもらえたら嬉しいです」と世代の近い子どもたちを前に挨拶した。
転落事故で夫を亡くした北久里子(河合優実)の話を聞いたフキが水風船を階下に落下させる場面について、フキの心境を問われた鈴木は「自分でもどのような感情で演じているのか実はわかっていなくて、自分の中には何人かの自分がいて、その自分の中にフキの自分を作って演じていたので、自分でも別の心情はわからない」と返答。これに早川監督は「考えないでやったこと、それがいい」と絶賛しながら「私自身、子どもの頃は自分が何を考えているのか考えていなかった。同じマンションに住む不思議な女性から話を聞いて、こんな高い所から落ちたらどれだけ痛いのか。好奇心から持っていた水風船を落とす。それ以上のことをフキは考えていないと思う。でも頭の片隅では何かを感じている。それを表現したかった」と当該シーンに込めた意図を説明した。
また自分と役との切り替えについて聞かれた鈴木は「カチンコの音で切り替えることが出来た。カチンコの音でクルッと変われる」と述べると、早川監督も「変わっていましたね!」とメリハリのある成り切りぶりに舌を巻いていた。
ラストシーンが印象的だったという感想に鈴木は「私も特に好きなシーンのひとつです。映画で描かれているラストは、脚本とは変わったのですが、とてもいいなと思いました」と秘話を披露。早川監督は「お母さんがテレパシーでフキが何を考えているのか当てようとしたシーンは、お母さんが出した答えが当たっているか当たっていないかは描いていないけれど、フキは微笑む。この母子は大丈夫だと感じさせたかった場面です」と狙いを明かした。
船の上でフキが踊る場面について「夢なのか、現実なのか?」との質問が出ると、鈴木は「夢と現実の間の感じ。」と自身の見解を述べた。早川監督は「予知夢かもしれないし、妄想かもしれないし、フキのお母さんの夢かも知れない。観客の皆さんが色々な風に捉えてもいいように作りました」と答えた。
また、ラスト付近でフキが誰かに向けて手を振るショットについて「フキの亡くなったお父さんに手を振っているのかと思った」などの感想があがると、鈴木は「私はお母さんに向けて振っていた」と演技の意図を解説。早川監督は「フキがいなくなったお父さんに手を振っていると解釈する方もいて、それも素晴らしいと思いました。お父さんに“久しぶり”と手を振っているのかもしれないし、お母さんに“いってきます”と手を振っているのかもしれない。もしくはフキが映画を観ている私たちに振っているのかもしれない。色々な解釈があってもいい」と話した。
参加した子供たちのほとんどが質問をしたり、独自の感想を述べたり、Q&Aは終始大盛り上がり。鈴木は「いつもとは違った角度から質問があってとても面白かった」と笑顔を浮かべて、早川監督も「色々な解釈を聞いてわかるもこともあって、それを踏まえて作品をもう一度観てみるともっとわかったりする。そういう映画の楽しみ方がある事を今日ちょっとでも感じてもらえたならばとても嬉しいです」と呼び掛けていた。

物語 1980 年代後半のある夏。11 歳のフキは、両親と3人で郊外の家に暮らしている。ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままに過ごしていた。ときどき垣間見る大人の世界は、複雑な感情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的。闘病中の父と、仕事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいく――。 ![]() |