直木賞作家・辻村深月氏による青春小説「この夏の星を見る」(KADOKAWA)を山元 環が自身初となる長編商業映画の監督を務め、東映配給により7月4日(金)に全国公開となる。
この度、本作の脚本家・森野マッシュ氏が法政大学文学部出身という縁で、法政大学キャリアデザイン学部TTCゼミ主催による特別試写会とトークイベントを実施することになった。同学部が掲げる「主体的に学び、社会と協働し、自らのキャリアを創造する力」の育成、その理念は、学生たちがコロナ禍で奪われた日常の中でも「今何ができるか」探し出す本作のテーマと重なる。
イベントには山元 環監督と森野マッシュに加え、東京パートで物語を担っている俳優の黒川想矢、星乃あんながサプライズゲストとして登壇した。
本作の脚本を担当した森野マッシュの母校である法政大学で、およそ200名の学生を招待する『この夏の星を見る』特別先行試写会を実施。山元監督が「皆さんが映画を観ている後ろ姿を見させていただいておりました。真剣なまなざしで観てくださっていて嬉しかったです」と挨拶すると、まさに母校への凱旋となった森野も「ここのスカイホールが開く機会はなかなかないので、今日は嬉しい気持ちです」と感激した様子を見せた。
学生たちから「辻村深月先生の小説をどうやって映画化に?」といった質問が。山元監督は「もともとプロデューサー・チームがいて、この映画の企画を立ち上げたわけです。僕がやりたいと思ったのは、辻村先生の原作というのがひとつ。そして、コロナ禍ではいろんな人たちが大きなダメージを受けましたが、そんな中で自分のやりたい目標や、自分が決めたことに対して一歩踏み出すような、みずみずしいキャラクターたちにスクリーンで出会いたいなと思ったのがきっかけです。プロデューサーの方々とそういう思いが合致したので、ぜひやらせていただきたいと思いました」と述懐。

また、「もともと辻村深月先生の小説が大好きだったんです」という森野も、「在学中から先輩に何が好き?と聞かれると、辻村先生ですと言ってきたくらい大好きな作家さん。脚本をやりませんか?と言われて叫んでしまったくらい本当に嬉しかったです。この中にも好きな原作を映像化したいという人もいるかもしれないですが、そんな日が来るんですよ! 言霊はあるので、言うことが大事だし、熱量があれば、やる機会はある。そういうことが提案できる業界だと思います」と万感の思いを明かし、学生たちに熱いメッセージを送った。

別の学生からは「おふたりの将来のビジョンは?」という質問も。山元監督は「この映画で日本アカデミー賞にいきたいです」とキッパリ。「賞というのは映画を頑張ってつくったことへの副産物だと思うんですが、形として残るのは嬉しいことです。日本だけでなく、海外の映画祭、たとえばヴェネチアとか、カンヌとかに行きながらも、ちゃんとエンタメをつくれる監督になりたい。ただ自分はコメディーが得意だから、コメディー監督になるんだと決めてしまうのはちょっともったいない。自分が思うよりも、人からはもっと多面的に見えてるところもあると思います。僕だって不倫のドラマばかり撮っていたのに、プロデューサー・チームから、めっちゃ青春の映画なんだけど撮らない?というオファーをいただきました。君の演出が良かった、コンセプトがしっかりしていたから今回の映画もできるんじゃないかと言って声をかけてもらえたので、どれだけ固まらずに立っていられるか、柔軟に動けるようにすることが重要だと思います」と語る。
対する森野は「将来的に自分がやりたいのは、人生でこれが好きなんだよね、というものに選ばれたいんですよ。あれで人生変わっちゃった、と言ってもらえるような作品をつくりたいです。もちろん賞もほしいですし、賞っていいものをつくったよねとチームが称えられるものだと思う。だから賞もほしいというのはありますけど、一番は一生懸命書き続けることです」と自身の信念を伝えた。
ここで会場にはサプライズで黒川想矢と星乃あんなの出席がアナウンスされると会場の学生たちも驚いた様子。中には「ファンなのでドキドキします」という人の姿もあった。そんな中、あらためて登壇者たちに質問を投げかけることになった。コロナ禍の学生生活を中心に描いているということもあり、本作の劇中では多くのシーンで俳優たちがマスクを着用していることに対し、当の俳優陣はどう感じていたのか。黒川は「衣装合わせの時点で、マスクをするから顔の下は見えないよというのは、監督と、天音さん(星乃)と話していたけど、ただあまり意識はしてなかった。どちらかというと顔で演技するというよりは、指先や身体で演技をするほうが僕にとってはしっくりくるので。顔で演技をするということは考えてなかったので、僕はいつもと変わらずでした」と語ると、星乃も「この映画では目で演技をすることがわたし的には重要かなと思っていました。望遠鏡を覗いていて、星を見つけたという時の目に光が入る感じ。目だけで分かる演技を心掛けました」と振り返った。
またこうした作品に関わる上で、「惑星や星の知識は勉強しましたか?」という質問もあり、「僕は宇宙が大好きで、この役が来た時も運命かと思うくらい嬉しかった」と語る黒川。「撮影に入る前に、星についての勉強会をやりました。東京・茨城・長崎って離れていると思うんですけど、その時だけキャストが集まったんです。その時があったから繋がっていられたというか、みんなが同じ熱量で芝居ができたのかなと思いました」と述懐。星乃は「わたしは幼少期から宝石とか、星とかキラキラしたものが好きだったので、その気持ちのまま演技に挑んでいました。また、幼稚園か小学校の時に買った図鑑が作中にも出てきた図鑑とまったく同じものだったんです。その図鑑を見て、自分が気に入った星に付箋を貼ったりしてたので、台本を読んでいたり、現場の雰囲気で演技をしたりする時に、その時のワクワク感が蘇ってきました」と語った。
コロナ禍の自粛期間中を振り返り、「コロナだと嘆くのではなく、コロナだったからこそできたことはあった?」という質問も。それに対して、「いきなりすぎて、状況が理解できませんでした。趣味とかも見つけられなくて、ずっとスマホゲームしかしていなかった。今、ギターを練習しているんですけど、自粛期間中に練習をしてれば今ごろ弾き語りもできたのにと後悔しています」と語る星乃。一方の黒川は「僕は餃子が本当に好きなのですが、当時は餃子づくりにハマってました。今は餃子づくりが上手だと思います」と明かし、会場を沸かせた。

さらにトーク中は、高校1年生である黒川、星乃から、現役大学生たちに向けて逆質問をぶつけるコーナーも。まずは黒川が「アルバイトをしてみたいのですが、オススメがあれば」と質問すると、「いまわたしはサウナでアルバイトしているのですが、暇な時間にはテレビを見たりすることもできるし、めっちゃ楽でオススメです」との回答が。すると、「僕もお風呂屋さんで働いたことがあるんですよ。けっこう時間がありますよね」と共感している様子の山元監督。その言葉を聞いた黒川も「いつかサウナ屋さんでお会いした時はよろしくお願いします」と返し、会場から拍手を送られた。
一方の星乃は「高校生になって、友だちと遊ぶことが増えてきたんですが、お小遣いじゃ足りなくなくなってしまいます。金欠の高校生が楽しめる方法を教えてほしいです」と質問。それには「食事の持ち込みオッケーで、高校生の料金が安くなるカラオケチェーン店があるので、そこでみんなで割り勘をしてパーティをすればそんなにお金がかかりません」という現実的なアドバイスがおくられた。まさに同じチェーン店を利用していたという星乃は、「そこでご飯を注文したら、3人で1万円くらいかかってしまったことがあったので、今度は持ち込みます」とアドバイスをしっかりと受け止めてる様子だった。

学生たちとの交流を果たした登壇者たちを代表して、最後に山元監督が挨拶。「ちょうど2020年の頃って、皆さんは高校生くらいですか? 映画の中でもありましたが、コロナ世代だと呼ばれて、あの時の大人たちのやり方に右往左往させられて、惑わされたと思うんです。ニュースでもかわいそうとかいうレッテルを貼られたりしたこともあったけど、その中でもあきらめずに元気な状態で、大学でもがんばっている。そういう世代のことをブレイブジェネレーション、勇気のある世代と呼ばれているんですよね。その思いを込めた映画です。コロナだからさみしい、悲しいではなく、コロナだから前に進めるような子たちが日本にいるよという思いを込めたので、皆さんのエネルギーをもって、SNSや友だちに伝えてもらえると、この映画のようにきれいな輪が広がっていくんじゃないかなと思います。ぜひこの作品をご贔屓によろしくお願いします」と呼びかけた。
7月4日(金)全国公開!!
出演:桜田ひより
水沢林太郎 黒川想矢 中野有紗 早瀬憩 星乃あんな
河村花 和田庵 萩原護 秋谷郁甫 増井湖々 安達木乃 蒼井旬
中原果南 工藤遥 小林涼子 上川周作 朝倉あき 堀田茜 近藤芳正
岡部たかし
原作:辻村深月「この夏の星を見る」(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:山元環
脚本:森野マッシュ
音楽:haruka nakamura
企画:FLARE CREATORS
総合プロデューサー:松井俊之(FLARE CREATORS)
プロデューサー:島田薫(東映)
配給:東映
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