日本女子大学 夏期特別教室
日付:8月28日(木)
場所:日本女子大学 成瀬記念講堂
登壇:原田マハ(原作者) 伊藤沙莉(主演)
司会:伊ヶ崎 大理(日本女子大学 家政学部家政経済学科教授)
ファシリテーター:小林 富雄(日本女子大学 家政学部家政経済学科教授)
映画の公開に先立ち、夏休み中の日本女子大学にて夏期特別教室~やりたいことの実現を目指す女性のチャレンジを大学生と考える~を行いました。

伊藤は「こんなにもたくさんの方に大切な作品を観ていただいて、本当にありがとうございます」と笑顔を見せ、温かい拍手に包まれる。
続いて、原作者の原田も「私が書いた『風のマジム』という小説を、このように素敵な映画に仕上げていただきました。そして伊藤沙莉さんが素晴らしいマジムを演じてくださいました。そんな作品を観ていただけて、本当に感謝しています」と深い思いを込めて語った。
作品にちなみ「夢を持つ始まり」というテーマが投げかけられた。伊藤は「私がお芝居を始めたのは9歳のとき。ドラマのオーディションに偶然合格したことがきっかけでした」と振り返り、「夢を強く意識して進んだというよりは、『楽しい』『好きだな』という経験が先にあって、それが自然に続いてきた」と自己分析した。
一方、原田は「夢に向かって……という感覚はあまりなかった」とし、「子どものころからアートや物語に触れることが好きで、自分の創作を楽しんでいた。夢とやりたいことの境目がない状態が一番幸せなスタートだったと思う」と語った。さらに、「60代で初めて映画監督に挑戦しました。年齢や国籍、ジェンダーは夢を阻むものではなく、誰でも挑戦できると伝えたい」と力強く述べ、会場を引き込んだ。
トークは「夢を追う中で壁にどう向き合うか」というテーマへと展開。伊藤は「私はあまり物事を『壁』と捉えないタイプ」と話し、「もちろん苦しいことや傷つくことはあるが、それを大きな障害だと思わず受け止めてきた」と明るく笑った。
そこから「失敗との向き合い方」に話題が移ると、伊藤は「失敗はするものだと思っている」と即答し、「失敗すれば後悔はあるが、恐れる必要はない。失敗を経験した人は他人に優しくなれるし、自分を高める要素になる」と持論を展開した。
同じテーマについて原田は「昔から『失敗は成功の母』と言われています」と述べ、「挑戦しないことの方がもったいない。特に若い世代には、失敗を恐れずに挑んでほしい。やり直しはきくし、その経験が必ず自分を育てる」と力強くメッセージを送った。
イベント後半では、学生からの質問に答えるコーナーも行われた。ある学生から「現代社会で女性がどのようにキャリアを築き、信念を持って生きていくべきか」という問いが投げかけられ、二人は映画を通じて得た自身の価値観や社会への視点について真摯に言葉を重ねていた。
学生から寄せられた「女性のキャリア形成や社会での生き方」に関する質問に対し、原田美枝子は「素晴らしい質問ですね」と目を向けながら、自身の考えを語った。
「私がキャリアをスタートさせた頃は、日本の社会における女性の地位は決して高いものではありませんでした。ですが、今は随分と変わってきていると思います。沙莉ちゃんが『虎に翼』で奮闘していましたよね。あの姿には私も感動しました」と、時代の変化を振り返る。
さらに原田は「ジェンダーや国籍、イデオロギーに左右されず、一人ひとりが自分の信念を持って『こう生きたい』と表現できる時代になりつつあります。ただ、日本にはまだ遅れている部分もあると感じます。だからこそ、自分のやりたいことを自由に実現できるよう、男女を問わず努力を重ねていくことが大切だと思います」と続けた。
一方、伊藤は自身の役づくりを振り返り、「マジムを演じて学んだのは“行動力”です」とコメント。「マジムは思い立ったらすぐに行動に移し、興味を持ったことに突き進んでいきます。それは誰にでもできることではなく、私自身は後回しにしてしまうことも多いので……」と笑みを浮かべつつ、「でも、行動力がある人は必ず何かを得ている。その姿に触れて、今後の自分の人生にも活かしていきたいと思いました」と語った。
続いての学生からの質問は「マジムのように自分の軸をぶらさず突き進む姿に勇気をもらいました。起業する方の行動力は本当にすごいと思う一方で、私は失敗を恐れてなかなか行動に移せません。お二人がさまざまなことに挑戦される際、その原動力やモチベーションはどのようなものですか?」という内容だった。
これに対し、原田は「私はよく人から『大変でしょう?』と言われるのですが、大変だと思ったことは一度もないんです。自分がやりたくてやっていることなので」と語る。さらに「もちろん思い通りにいかないことはありますが、それも自分が思い描くことを実現するために必要な過程だと考えれば、栄養のように受け止められるのではないかと思います」と答えた。
一方の伊藤は「私のモチベーションは小さい頃から変わっていません」とはにかみながらコメント。「“家族に褒められたい”という気持ちなんです。母に『すごいね』と言われたり、叔母に『かっこいい』と言われたりすると、本当にやってよかったと思えます」と明かす。続けて「私は“かっこよく生きよう”とは思っていないので、モチベーションも大きなものでなくていいんです。たとえば『大金持ちになりたい』でもいいし、ほんの小さな願望でも自分の行動の原動力になる。そういう軽やかなもので十分だと思います」とメッセージを送った。
会場では学生たちが真剣に耳を傾ける姿が印象的だった。イベントの終盤、伊藤は「本当にたくさんお集まりいただきありがとうございました。フレッシュな空気の中で皆さんとお話できて嬉しかったです」と笑顔を見せる。原田も「若いエネルギーに満ちた皆さんを前に、沙莉さんと一緒に『風のマジム』を送り出す瞬間に立ち会えたことが本当に嬉しいです」と感謝を述べ、温かな雰囲気のままイベントは締めくくられた。
物語
伊波まじむ(伊藤沙莉)は那覇で豆腐店を営む祖母カマル(高畑淳子)と母サヨ子(富田靖子)と暮らしながら、通信会社・琉球アイコムの契約社員として働いている。まじむは沖縄弁で「真心」を意味する言葉で祖母がつけた名前だ。
いつも祖母と一緒に通うバーで、ラム酒の魅力に取り憑かれたまじむは、その原料がサトウキビだと知る。折しも社内ベンチャーコンクールが開催され、まじむは、南大東島産のサトウキビからラム酒を作る企画で応募するが、それはやがて家族、会社、島民をも巻き込む一大プロジェクトへと発展していくーー。
出演:伊藤沙莉 / 染谷将太 /尚玄 シシド・カフカ 橋本一郎 小野寺ずる/なかち 下地萌音 川田広樹/
眞島秀和 肥後克広/ 滝藤賢一/ 富田靖子/ 高畑淳子
原作:「風のマジム」原田マハ(講談社文庫)
主題歌 森山直太朗(ユニバーサル ミュージック)「あの世でね」
エグゼクティブプロデューサー:笹岡三千雄 製作:オーロレガルト
製作・配給:コギトワークス 共同配給:S・D・P
制作プロダクション:ポトフ 企画プロデューサー:関友彦 プロデューサー:佐藤幹也
脚本:黒川麻衣 監督:芳賀薫
2025/日本/DCP/カラー/シネマスコープ/ 5.1ch/105 分/G
©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社